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高圧モーターのコイル巻替修理を依頼する際に注意すべきポイント

産業用モーターの芯出し

低圧モーターと高圧モーターのコイル巻替修理の違い

プラントや工場などで使用される高圧モーターは、運転を支える中核的な設備です。一方で、低圧モーターも汎用的に至るところで使われています。どちらのモーターにも当然ながらステーターコイルが含まれており、経年劣化や不具合によって巻替修理が必要になる場合があります。

低圧モーターは、使用される銅線や絶縁材も比較的汎用的であるため、修理に要する手間が比較的少なく済みます。一方の高圧モーターは高い電圧で動作するだけに複雑で、高度な絶縁性能や耐熱性能が求められ、修理にあたってはより専門的な技術と設備が必要になります。

本記事が、高圧モーターを使用している皆様に対して、「修理がどのように行われるのか」「なぜ高圧モーターの修理には時間やコストがかかりやすいのか」等、万が一のトラブルを想定した際の何かの参考になればと思います。ここでは、高圧モーターのステーターコイル巻替修理に関わる要点を解説していきます。

高圧モーターコイル巻替修理の難易度を決める要因

高圧モーターのコイル巻替修理は、以下のような要因によって難易度や必要となる期間が左右されます。皆様が依頼先を検討するときは、どのような点が修理の品質や納期に影響を与えるか、知っておくと役に立ちます。

1.構造の複雑さ

高圧モーターは低圧モーターと比べて巻線の構造が複雑です。多層巻線や特殊なスロット形状など、設計上の理由から作業工程が増えがちです。大型モーターであればあるほど扱いが難しくなります。

ステーターコイル抜き取り後スロット状況
ステーターコイル抜き取り後スロット状況

2.銅線材料の特徴

高圧モーターでは、大電流や高電圧に耐えられる高品質の銅線を使用します。特に平角線(断面が長方形の銅線)が多く用いられ、効率的にスロット内へ収納できる反面、加工や取り扱いには精度が求められます。

  • 耐熱性や絶縁性能が高く、専門的な加工が必要
  • メーカーや機種ごとにサイズや仕様が異なる

これらの特徴により、銅線の調達や加工に時間とコストがかかります。

ステーターコイル製作
ステーターコイル製作

3.絶縁処理の精度

数千ボルトもの高電圧がかかる高圧モーターでは、コイルとコアの間、およびコイル同士の絶縁が極めて重要です。絶縁材の選定や乾燥・含浸処理といった工程は、修理の品質やモーターの寿命を左右するポイントになります。

ステーターコイル各ワニス処理後状況
ステーターコイル各ワニス処理後状況

4.修理環境と設備

高圧モーターの巻替修理では、専用の巻線機や真空含浸装置、高温乾燥炉などの特殊設備が必要となるケースが多いです。こうした設備が整った修理工場が少ないことは、納期や費用に影響する大きな要因です。

コイル成型機
コイル成型機

5.熟練技術者の経験

平角線のテンション管理やスロットへの収納など、高圧モーター特有の工程には熟練技術が求められます。技術者のスキルや経験値が、修理後の品質や安定稼働を大きく左右します。

熟練技術者

6.作業時間とコストの制約

プラントや工場など、モーターが止まると全体の稼働に影響を及ぼす場合、修理のスピードが重要です。ただし、平角線の在庫状況や絶縁材の調達状況などによっては、どうしても納期が長引いてしまうこともあり得ます。事前に修理計画を立てることで、時間的リスクをできる限り抑えることが大切です。

例えば、次回整備の際はコイル巻替を予め計画されている場合は、整備の際に銅線サイズ・仕様を記録しておくと、コイル巻替整備の際の全体工期の短縮に繋がります。

作業時間とコストの制約

モーターの整備・修理に関してご相談ごとがあれば、お問い合わせフォームよりご照会ください。

高圧モーターの修理を依頼する際に注意すべきポイント

高圧モーターの修理を依頼する際には、どのような点に注意すべきでしょうか?以下に主なポイントをまとめます。

1.専用の巻線設備を持つ業者へ依頼

高圧モーターはスロットが密集しており、平角線を正確に収納する作業が難易度の高いポイントです。テンション管理が不十分だと、絶縁トラブルやコイルの破損につながります。確かな実績と専用の巻線設備を持つ業者へ依頼することが望ましいです。

ステーターコイル入れ
ステーターコイル入れ

2.ワニス含浸などの絶縁技術を有する業者への依頼

高圧モーターには高い耐電圧性・耐熱性が求められるため、絶縁材の品質と処理工程が非常に重要です。絶縁材の選定から巻線後の乾燥・含浸まで、精密な作業が必要になります。後々の故障リスクを下げるためにも、材質や工程についてしっかり確認することが大切です

3.計画停止(定修)の時期に合わせた依頼

高圧モーター用コイルの銅線はサイズ・仕様の都合で受注生産になることが殆どなので、取り寄せまでに時間がかかります。計画停止(定修)の時期に合わせたり、余裕を持ったスケジュールを立てたりしておくと、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。

4.業者の過去の実績の確認

作業者の経験やスキルが修理品質を大きく左右します。過去の実績や設備状況などを事前に確認し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

高圧モーターの修理に対応できる業者の現状

1.業者数の減少傾向

高圧モーターの巻替修理は高度な専門技術と専用設備が必要なため、対応できる業者は以前から限られていました。さらに近年は技術者の高齢化や人材不足が進み、廃業や事業縮小を余儀なくされる企業も増えています。その結果、修理先を探す際に選択肢が少なくなる傾向が続いています。

2.修理需要の増加

一方で、新しいモーターを購入するよりも既存モーターの修理・延命を選択するケースが増えています。コスト面や設備の入れ替えによる操業停止リスクなどを考慮すると、巻替修理で対応するほうがメリットが大きい場合も多いためです。こうした背景から、高圧モーターの修理需要は依然として高い水準にあります。

3. モーターの製造メーカーに修理を依頼する場合の課題

  1. 製造年が古いモーターの修理:古いモーターの場合、メーカーが設計図や製造記録を破棄・処分しており、修理を断ることがあります。また、部品製造が終了しているケースも多く、修理費用が膨大になる場合もあります。
  2. 海外製モーターの修理:海外製のモーターは国内メーカーや修理業者が設計情報を持っていないことが多く、依頼先が見つからないことがあります。海外メーカーに依頼する場合は、部品輸入やコミュニケーション、輸送コストなどのハードルが高くなりがちです。
  3. 修理費用の高額化:メーカー修理は純正部品を使う分、安心感がある一方で費用が高騰することがあります。場合によっては新規購入に近い/それ以上のコストとなるため、修理か更新かで悩むケースが少なくありません。
  4. 修理依頼先の分散:メーカーは自社製品を優先して修理するため、複数メーカーのモーターを使用している現場では依頼先が分散するなど管理面での負担が増えます。

まとめ

このように、高圧モーターのステーターコイル巻替修理は、専門性の高さと設備投資のハードルから対応可能な業者が限られる一方、修理需要は高まり続けています。

当社では、製造年の古いモーターや海外製モーターにも対応可能な修理体制を整えております。詳細な図面がない場合でも、豊富な実績でコイルの巻替修理を行いますので、ぜひお気軽にご相談ください。

高圧モーターは重要な設備だからこそ、不具合や故障の際には早期対策と正確な修理が欠かせません。今回ご紹介した修理のポイントや依頼先選定のコツを押さえることで、モーターの長寿命化と安定稼働を実現していただければ幸いです。

モーターの整備・修理に関してご相談ごとがあれば、お問い合わせフォームよりご照会ください。

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