写真(左)は直流モーター250kWステーター主極コイルの巻き替え、写真(右)は、高圧モーター340kWステーターコイルの巻き替えです。
コイルの巻き替えとは
- コイルの巻き替えとは、老朽化したコイルをスロットと呼ばれる鉄芯から抜き取った後に、新規に製作したコイルと絶縁物をスロットに挿入した上で、ワニス処理などを施す加工方法です。
- コイルの焼損など修理が必要な場合、絶縁抵抗値の低下、絶縁物の劣化など予防保全が必要な場合に、コイルを巻き替えによって、新品に買い替えることなく、モーターの再生が可能です。
- 特に、直近では、生産に欠かせない旗艦設備/装置のモーターコイル焼損トラブルが起こったが、「モーターが古い/海外製/特殊といったことを理由にモーター修理ができない」「モーターだけでなく設備/装置全て更新することが必要」とメーカーに言われて困っているという声を頂きます。弊社では、そのようなモーターでもコイル巻替整備で復旧が可能です。是非、お気軽にお声掛けください。
釜石電機の強み
- 当社は創業以来モーター・ポンプの整備を手掛けておりますが、焼損コイルの巻き替え整備も創業以来取り組んでおり、当社の強みの1つでもあります。
- コイルを巻き替えられる業者は、全国でもかなり少なくなって来ていますが、当社では、今までの経験とノウハウを生かし、低圧モーター用のステーターコイルだけでなく、高圧モーター用や直流モーターのアマチャー(回転子)コイル等々、さまざまの種類のモーターをサポートしております。
コイル巻き替え整備の全国対応を開始致しました。コイルが焼損してしまいお困りのお客様は、お気軽にお問い合わせください。
コイルの巻き替え修理のメリット
1. 生産が終了したモーターの再生
旧式の機械に採用されているモーターは、汎用モーターではないため、交換することができないケースが多くあります。そのようなケースにおいて、コイルの巻き替え修理によるモーターの再生が可能です。
2. 海外製/特殊なモーターの修理
海外製/特殊なモーターの場合、新品の調達が困難なケースが多くあります。そのようなケースにおいて、コイルの巻き替え修理によるモーターの再生が可能です。
3. 納期面でのメリット
モノの供給が安定していないご時世の中で、新品を発注しても納期まで数ヶ月、場合によっては半年~1年以上かかることもあり
ます。そのような時、コイルの巻き替えならば、比較的短納期で再生が可能です。モーター仕様や他の損傷状態にもよりますが、特急であれば、約1週間から10営業日程度で対応することが可能です。(なお、高圧モーターの場合は、銅線仕入の都合上、納期が長くかかることが多々あります)
焼損コイルの巻き替え手順のご紹介
さて、今回は、交流かご型低圧モーター(注)を例に、焼損コイルの巻き替え手順についてご紹介します。
(注)交流かご形低圧モーター、出力22kW・極数4Pのブロアー用モーターのステーターコイルの巻き替え
1. ステーターコイル焼損状態
写真にあるようにかなり焦げて、一目で焼損していることが分かります。ちなみに分解前のモーター外観も載せていますが、かなり年季も感じますね。
2. ステーターコイル抜き取り
分解後、焼損したコイルをバーナーで炙りながら抜き取ります。
3.ステータースロット掃除
コイルを抜き取った後は、鉄心のスロット(鉄心溝)をきれいに掃除します。キレイに焼損コイルが除去されました。
4. コイル製作
スロットに入れるコイルを1本ずつ木型にあわせて巻いていきます。過去に巻いてきたコイルの木型が無数に社内にあるので、どんな形状のコイルがきてもすぐに対応できます。
5. コイル入れ
絶縁紙をスロットとコイルの間に挟み込みながらコイルを入れ込んでいきます。スロットを傷つけないように入れなくてはいけないので、作業は慎重におこなう必要があります。
6. ステーターコイル結線→コイル入れ完了
コイルを入れた後に結線作業をしてコイル入れ作業は完了です。ただし、まだコイル巻替作業はこれで完了ではありません。
7. ワニス含浸処理
コイルを入れた状態のステーターを予備乾燥して湿気を除去した後に、ワニス含浸処理を施します。コイル自体の絶縁補強はもちろんのこと、コイルとスロットの隙間をなくして、稼働中、コイルが動かなくさせる役割もあります。
8. 本乾燥、およびワニス除去
含浸させたステーターを再度乾燥させ(=本乾燥)、その後にスロット表面に残っている余分なワニスを丁寧に除去していきます。乾燥を繰り返したりワニスを含浸させたり、コイルを入れてからも結構時間がかかってしまうことが分かります。
9. 仕上げワニス処理をしてステーターコイル巻替完了
ワニス除去したあとは、ステーター内部のコイル表面にワニススプレーを塗布します。ご覧の通り、上記の作業内容からすると、他の記事でも書いたように仕上げワニス処理はあくまで最後の仕上であることが分かります。コイル巻替整備の際は、ワニス含浸処理は必須ですが、通常の整備(オーバーホール)の際も、ワニス含浸処理まで実施することを是非おススメしたいです。
10. 組立・塗装完了
ベアリング(軸受)等の他の部品の交換・設置後、組立して塗装をした整備完了した状態です。完成試験(無負荷通電試験)でも無事に稼働することを確認してから、いざ出荷です。
今回は交流かご形低圧モーターの焼損コイルの巻き替え整備についてご紹介しましたが、高圧モーター等、その他のコイル巻き替え整備についても別の記事で紹介していきます。
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