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巻線型モーターの長寿命化と安定稼働の ために

産業用モーターの芯出し

1. 巻線型モーターとは?その基本構造と重要性

巻線型モーターは、多くの工場設備や産業機器において使用される重要な電動機の一種です。このモーターは、内部に巻線を持つローターを特徴とし、高トルクが必要な場面や速度制御が求められる環境で特に活躍します。主にクレーンやエレベーターなどの負荷変動が大きい機器で広く利用されています。

巻線型モーターの基本構造は、次の3つの主要な部品で構成されています

  1. 固定子(ステーター):電磁界を発生させる部分で、巻線が施されています。
  2. 回転子(ローター):固定子の磁界に反応して回転する部分で、巻線や抵抗器が接続されています。
  3. ブラシとスリップリング:回転子に電流を供給するための接続機構。
巻線型モーター
巻線型モーター
ブラシとスリップリング
ブラシとスリップリング

これらの部品が正確に連携することで、効率的な運転が可能となります。 このモーターが特に重要視される理由は、過負荷状態での性能や、高トルクを必要とするスタート時の安定性です。また、スリップリングを介して外部抵抗器を調整することで、速度制御が可能となる点も大きな特徴です。

巻線型モーターの適切な整備とメンテナンスは、工場全体の生産性や安全性に直接影響を及ぼします。そのため、日常的なメンテナンスの重要性を理解し、実施することが欠かせません。

2. 巻線型モーターの定期メンテナンス手順:効果的な実施方法

巻線型モーターを最適な状態で運転し続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。ここでは、具体的な手順とポイントを解説します。

ステップ1. 外観検査

定期メンテナンスの第一歩は、モーターの外観検査です。次の項目を確認してください

  1. 汚れやほこりの堆積 :冷却効率の低下や絶縁性能の劣化につながる可能性があるため、清掃が必要です。
  2. 異常な振動や音:運転中の異音や過剰な振動は、内部部品の不具合を示す場合があります。
  3. 配線や接続部分:断線や緩みがないか確認します。
正確な芯出しを実現するために

ステップ2: 電気部品の点検

  1. 巻線の抵抗値測定: 巻線の抵抗値を測定し、基準値からのずれがないか確認します。抵抗値の変動は、巻線の損傷や短絡の兆候です。
  2. 絶縁抵抗試験: 絶縁劣化を防ぐため、メガオーム計を使用して定期的に確認します。特に湿度が高い環境では注意が必要です。

ステップ3: メカニカル部品の点検

  1. スリップリングとブラシの状態確認: スリップリングが摩耗していないか、ブラシの長さが適切かを確認します。不具合があれば交換が必要です。
  2. 軸受(ベアリング)の点検: 潤滑剤の劣化や異常な摩耗がないかを確認し、必要に応じて再潤滑または交換を行います。

ステップ4: 清掃と潤滑

  1. 冷却ファンと通風路の清掃: 効率的な冷却が妨げられると、モーターが過熱し寿命が短くなります。
  2. 潤滑剤の補充: 適切な潤滑剤を選び、過剰にならないよう注意しながら補充します。

ステップ5:試運転と動作確認

メンテナンス後は試運転を行い、以下の点を確認してください。

  1. 異常音や過剰な振動がないか
  2. 温度が急激に上昇していないか
  3. 電流値が正常範囲内に収まっているか

メンテナンスを記録する重要性

実施した点検内容を記録することで、次回のメンテナンス時に参考となるデータが得られます。これにより、異常の早期発見やトラブルの未然防止につながります。

モーターの整備・修理に関してご相談ごとがあれば、お問い合わせフォームよりご照会ください。

3. 巻線型モーターの故障原因と解決法:トラブルを未然に防ぐには

巻線型モーターのトラブルは、運転効率の低下や予期せぬ停止を引き起こし、生産性に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、主な故障原因とその対策を解説します。

1. 巻線の絶縁劣化

 • 高温環境や湿度の影響で絶縁材が劣化する
• 過電流やサージ電圧によるダメージ

 • 定期的に絶縁抵抗測定を実施し、基準値以下の場合は交換を検討
• モーターが過熱しないよう、冷却システムを適切に維持

2. スリップリングやブラシの摩耗

 • 長時間使用による摩耗や表面の荒れ
• 接触不良による異常なスパーク

 • 定期的にスリップリングの状態を確認し、必要に応じて研磨または交換
• ブラシの残り長さをチェックし、基準値以下の場合は早めに交換

3. ベアリングの不具合

 • 潤滑不足や潤滑剤の劣化
• 過剰負荷や振動による摩耗

 • 定期的に潤滑剤を適量補充し、適切な潤滑を維持
• 振動や異音がある場合、早急にベアリングを交換

4. 電気的な異常(電圧・電流の不均衡)

 • 電源からの過負荷や電圧変動
• 不適切な接続やケーブルの断線

 • 電圧・電流のモニタリングを行い、異常値が検出された場合は原因を特定
• 電源システム全体を点検し、不良箇所を修正

スリップリング研磨前
スリップリング研磨前
スリップリング研磨後
スリップリング研磨後

5. 異音や振動の発生

 • アライメント不良
• 内部の部品破損や緩み

 • モーターの取り付け状態を確認し、適切な位置調整を行う
• 異常が続く場合は内部の部品点検を実施

トラブルを未然に防ぐために

巻線型モーターのトラブルは、些細な異常を見逃すことで深刻化することが少なくありません。小さな異変でも早期に対応することが重要です。また、適切な記録を行い、故障履歴を把握することで同じトラブルを繰り返さないようにすることも効果的です。

4. 効率的なメンテナンスで巻線型モーターの寿命を延ばすために

巻線型モーターの寿命を最大限に延ばし、長期間安定して使用するためには、効率的なメンテナンス戦略が不可欠です。ここでは、具体的な実践方法と今後の展望について解説します。

1. 定期的な予防保全の導入

モーターの不具合を防ぐ最も効果的な方法は、定期的な予防保全です。以下を実践することで、寿命を大幅に延ばすことが可能です。

  1. 点検スケジュールの作成:1ヶ月ごとの簡易点検、半年ごとの詳細点検など、計画的にメンテナンスを実施します。
  2. 劣化パターンの把握:過去の故障履歴や動作データから、予兆を捉えられないか確認します。
計測器の事前キャリブレーション

2. 状態監視技術の活用

最近では、モーターの状態をリアルタイムで監視する技術が進化しています。以下のようなツールを利用すると、効率的な管理が可能です。

  1. 振動センサー:異常な振動を検知し、故障リスクを早期に特定します。
  2. 温度センサー:異常発熱を監視し、絶縁劣化や過負荷を防ぎます。
  3. IoT対応デバイス:クラウドを活用したデータ収集で、遠隔監視や解析が可能です。

3. 適切な運転条件の維持

  1. 負荷のバランス管理:過負荷運転や急激な負荷変動はモーターの寿命を縮めます。
  2. 環境管理:湿度や粉塵の多い環境では、モーターを保護するエンクロージャやフィルターの利用を検討してください。

4. 長期的な視点での計画保全

巻線型モーターは高価な設備投資となるため、その運用計画を長期的に立てることが経済的です。

  1. 主要部品の交換周期の設定:ブラシやスリップリング、ベアリングなどの消耗部品は、交換時期を予測し事前に準備しておくことで、突発的なダウンタイムを回避できます。
  2. 更新計画の立案:寿命を迎えるモーターや老朽化した設備の更新計画を早めに立てることで、予算管理と効率的な運用が可能になります。

まとめ:継続的/定期的な点検・整備が鍵

巻線型モーターの寿命を延ばすためには、日々の点検や整備に加え、予防保全や最新技術の活用が重要です。適切なメンテナンスによって、トラブルを未然に防ぎ、生産性を高めることが可能になります。また、効率的な運用計画と従業員の教育を組み合わせることで、工場全体のパフォーマンスを向上させることができます。

最終的には、こうした取り組みが設備コストの削減にもつながります。巻線型モーターを安全に、そして長期間活用するために、ぜひ今回の内容をご参考頂ければ幸いです。

モーターの整備・修理に関してご相談ごとがあれば、お問い合わせフォームよりご照会ください。

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