産業用モーターは、工場や設備の中枢を担う重要なコンポーネントです。そのため、モーターの故障を未然に防ぎ、安定した運用を続けることが設備の保全担当者にとって最も重要な課題の一つとなっています。このお役立ち情報では、モーターの故障予防に必要な日常的な点検と計画的なメンテナンスの方法について、詳しく解説します。
1. 産業用モーターの故障予防の重要性
故障予防のためには、日常的な点検と計画的なメンテナンスが不可欠です。これにより、モーターの寿命を延ばし、予期しないダウンタイムを最小限に抑えることができます。また、定期的な点検とメンテナンスを通じて、モーターの性能を最大限に引き出し、エネルギー効率を向上させることも可能です。
まず、故障の原因として最も一般的なのは、過熱、過負荷、振動、絶縁劣化、そして摩耗です。これらの要因は全て、適切な点検とメンテナンスによって早期に発見し、対応することができます。特に、過熱や振動はモーターの内部に深刻なダメージを与える可能性があるため、これらの監視は非常に重要です。次のセクションでは、具体的な点検項目とその基準について詳しく説明します。
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2. 日常的なモーター点検のチェックリスト
日常的なモーター点検は、故障の早期発見と予防に不可欠です。以下は、モーターの状態を把握し、異常を早期に発見するための具体的なチェックリストです。
温度測定
モーターの温度が周囲温度よりも40℃以上高くないか確認します。例えば、周囲温度が25℃の場合、測定温度が65℃以上であれば異常が疑われます。温度計を使用して定期的に測定し、過熱がないかチェックします。
振動測定
振動測定は、モーターの回転部分の異常を検知するために行います。振動計を使用し、回転数に応じた基準値内に収まっているか確認します。例えば、回転数が1500rpmの場合、振動が25/1000mm以内であれば正常とされます。振動が基準値を超える場合、ベアリングや回転部分の摩耗等が疑われます。
絶縁抵抗測定
絶縁抵抗測定は、モーターの絶縁状態を確認するために重要です。交流モーターの場合は低圧で1MΩ以上、高圧で3MΩ以上であることが推奨されます。絶縁抵抗計を使用し、定期的に測定することで絶縁劣化による故障を防ぐことができます。
ベアリング測定
ベアリングの摩耗や損傷を早期に発見するために、マシンチェッカを使用して測定を行います。軸ジャーナル径が50mm、回転数が1800rpmの場合、0.7×50×1800²×10⁻⁸以内であれば正常と判断されます。
異常音の検知
異常音はモーターの故障の前兆であることが多いため、聴音棒を使用して定期的にチェックします。例えば、キリキリ音は塵埃や鉄粉の混入、ゴト音はベアリングの損傷を示している可能性があります。異常音が検知された場合は、直ちに原因を特定し、適切な対策を講じる必要があります。
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3. モーターの温度測定方法と基準
モーターの温度測定は、過熱による故障を予防するために非常に重要です。過熱はモーターの寿命を著しく短くし、内部部品にダメージを与える可能性があります。以下に、モーターの温度測定方法と基準について詳しく説明します。
温度測定の方法
- 温度計の準備: 適切な温度計(例えば、非接触型の赤外線温度計など)を用意します。
- 測定位置の選定: モーターの外側にある測定ポイントを特定します。通常、モーターのケーシングの表面温度を測定します。
- 測定: 温度計を使用して、モーターの表面温度を測定します。測定は定期的に行い、記録します。
基準値
- 測定温度が周囲温度より40℃以上高い場合は、何らかの異常が発生している可能性があります。例えば、周囲温度が25℃の環境において、測定温度が65℃以上の場合は注意が必要です。
- 過熱が確認された場合、冷却システムのチェックや、モーターの負荷を確認する必要があります。
過熱の原因と対策
過負荷、冷却システムの不具合、摩耗したベアリングなどが考えられます。
過負荷を軽減するための運転条件の見直し、冷却システムの修理や清掃、ベアリングの交換などが必要です。
定期的な温度測定と記録を行うことで、モーターの状態を継続的に監視し、過熱による故障を未然に防ぐことができます。
4. モーターの振動測定方法と基準
振動測定は、モーターの回転部分の異常を検知するために行います。振動の増加は、ベアリングの摩耗やアンバランス、軸のずれなどの兆候である可能性があります。以下に、振動測定の方法と基準について詳しく説明します。
振動測定の方法
- 振動計の準備: 適切な振動計(例えば、加速度計)を用意します。
- 測定位置の選定: モーターの主要な部位(ベアリングハウジング、ケーシングの中央部など)に測定ポイントを設定します。
- 測定: 振動計を使用して、各測定ポイントで振動を測定します。測定は定期的に行い、記録します。
基準値
振動の許容判定基準は、モーターの回転数に依存します。以下に基準値の一例を示します。
- 回転数 1000rpm(6P): 基準値 35/1000µm
- 回転数 1500rpm(4P): 基準値 15/1000µm
- 回転数 3000rpm(2P): 基準値 15/1000µm
振動が基準値を超える場合、モーターに異常が発生している可能性があります。
振動の原因と対策
ベアリングの摩耗、アンバランス、軸のずれ、緩んだ取り付けなどが考えられます。
ベアリングの交換、モーターのバランス調整、軸の整列、取り付けの再締付けなどが必要です。
定期的な振動測定と記録を行うことで、モーターの異常を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。これにより、モーターの信頼性と寿命を向上させることができます。
5. モーターの絶縁抵抗測定方法と基準
モーターの絶縁抵抗測定は、絶縁状態を確認するために重要です。絶縁が劣化すると、電気的な漏れや短絡が発生し、モーターの故障を引き起こす可能性があります。以下に、絶縁抵抗測定の方法と基準について詳しく説明します。
絶縁抵抗測定の方法
- 絶縁抵抗計の準備: 適切な絶縁抵抗計(例えば、メガー)を用意します。
- モーターの準備: モーターを停止し、電源から切り離します。安全のため、測定前に電源が完全にオフになっていることを確認します。
- 測定ポイントの設定: モーターの各相(U、V、W)に対して測定を行います。また、各相とアース間の絶縁抵抗も測定します。
- 測定: 絶縁抵抗計を使用して、各測定ポイントで抵抗値を測定します。測定は定期的に行い、記録します。
基準値
- 低圧モーター(500V以下): 1MΩ以上
- 高圧モーター(1000V以上): 3MΩ以上
測定結果が基準値を下回る場合、絶縁劣化が疑われます。
絶縁劣化の原因と対策
高湿度、汚染物質の付着、熱による劣化、機械的な損傷などが考えられます。
モーターの清掃と乾燥、汚染物質の除去、およびワニス含浸等の絶縁補強、あわせて適切な冷却システムの維持、損傷部分の修理や交換等が必要です。
定期的な絶縁抵抗測定と記録を行うことで、モーターの絶縁状態を継続的に監視し、絶縁劣化による故障を未然に防ぐことができます。
6. モーターのベアリング測定方法と基準
ベアリングはモーターの回転部分を支える重要な部品であり、その状態を適切に管理することはモーターの寿命と性能を維持するために不可欠です。以下に、ベアリングの測定方法と基準について詳しく説明します。
ベアリング測定の方法
- マシンチェッカの準備: 適切なベアリング測定機器(例えば、マシンチェッカ)を用意します。
- 測定位置の選定: ベアリングハウジングの中心部に測定ポイントを設定します。
- 測定: マシンチェッカを使用して、ベアリングの振動や異音を測定します。測定は定期的に行い、記録します。
基準値
ベアリングの許容判定基準値は、以下の計算式を使用して求められます。
- 基準値 = 0.7 × 軸ジャーナル径 (D) × 回転数 (N)² × 10⁻⁸以内
例えば、軸ジャーナル径が50mm、回転数が1800rpmの場合、基準値は以下のようになります。
- 基準値 = 0.7 × 50 × 1800² × 10⁻⁸ = 1.134
ベアリングの異常の原因と対策
振動が基準値を超える場合、ベアリングの摩耗や損傷、潤滑不良、汚染物質の混入が疑われます。
異常が確認された場合、ベアリングの交換、潤滑油の補充または交換、清掃や汚染物質の除去が必要です。
定期的なベアリング測定と記録を行うことで、ベアリングの状態を継続的に監視し、異常が発生した場合には早期に対策を講じることができます。これにより、モーターの信頼性と寿命を向上させることができます。
7. モーターの異常音検知と対策
異常音はモーターの故障の前兆であり、その検知は故障予防において非常に重要です。異常音の発生は、モーター内部の摩耗や損傷を示している場合があります。以下に、異常音の検知方法と対策について詳しく説明します。
異常音の検知方法
- 測定位置の選定: モーターの主要な部位(ベアリングハウジング、ケーシングの中央部など)に測定ポイントを設定します。
- 検知: 聴音棒を使用して、各測定ポイントで異常音を確認します。異常音が確認された場合は、その音の種類と発生箇所を特定します。
異常音の種類と原因例
キリキリ音
キリキリ音: 塵埃や鉄粉の混入、グリス切れが原因で発生する高周波音。ベアリングや回転部分の潤滑が不十分な場合に発生します。
グリスの補充や交換を行い、ベアリングや回転部分の潤滑状態を改善します。また、塵埃や鉄粉が混入している場合等、状況に応じてベアリングの交換が推奨されます。
ゴト音
ベアリングのレース面に傷がついたり、打痕や剥離が発生している場合に聞こえる重低音。摩耗や損傷が進行している可能性があります。
ベアリングの摩耗や損傷が確認された場合、直ちにベアリングを交換します。また、モーターの取り付け状態を再確認し、軸の整列を行います。
定期的な異常音の検知と記録を行うことで、モーターの内部状態を継続的に監視し、異常が発生した場合には迅速に対策を講じることができます。これにより、モーターの信頼性と寿命を向上させることができます。
8. 定期的なメンテナンスの計画と実施
定期的なメンテナンスは、モーターの寿命を延ばし、予期せぬ故障を防ぐために不可欠です。以下に、定期的なメンテナンスの計画と実施方法について詳しく説明します。
メンテナンスの計画
- 点検スケジュールの作成: モーターの使用状況に応じて、定期的な点検スケジュールを作成します。通常、月次、四半期、年次などの頻度で点検を行います。
- 点検項目の設定: 各点検で確認する項目(温度、振動、絶縁抵抗、ベアリング、異常音など)を明確にします。
- 記録と分析: 各点検の結果を記録し、時系列でデータを分析します。これにより、異常の早期発見と傾向管理が可能になります。
メンテナンスの実施
- 日常点検の実施: 日常的にモーターの状態を確認し、異常がないかチェックします。具体的な点検項目は前述の通りです。
- 定期点検の実施: 計画に基づいて定期点検を実施します。点検項目に基づいて、各部位の状態を詳細にチェックし、必要に応じてメンテナンスを行います。
- 予防的保全: 異常が確認された場合、早急に修理や部品の交換を行います。また、点検結果に基づいて、今後のメンテナンス計画を見直し、必要な対策を講じます。
最後に
定期的なメンテナンスの実施は、モーターの信頼性を向上させ、生産ラインの安定稼働を実現するために欠かせません。当社は定期点検とメンテナンスを実施しています。モーターの寿命を延ばすために、お悩みのこと/気になることあれば、お気軽にお問合せください。
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