モーター・ポンプの整備をする際、シャフトやスリーブの摩耗は、ベアリングやパッキンとの接触部にはよく生じる現象ですが、放っておくと、振動や異音等につながるだけでなく、ひどい場合には稼働停止につながる可能性もあります。
釜石電機では、分解点検時の診断結果に応じて、溶射加工によって摩耗部の再生を施します。溶射加工によって部品交換が不要になるのはもちろんのこと、溶射加工は内製化しているので、お急ぎの整備の際もお役立ていただけます。
溶射とは
- 溶射とは、様々な材料(金属・セラミックス・プラスチック等)を、熱源を用いて加熱により溶融もしくは軟化させ、粒子にして加速し被膜対象物(基材)の表面に噴射衝突させて、被膜を形成する表面改質技術の一つです。
- 溶射は目的に応じて使い分けることができ、高温強度の向上・機械摩耗の低減・化学腐食等に対する長寿命化等を図ることが出来ます。
- 代表的な加工方法として、アーク溶射、プラズマ溶射、高速フレーム溶射などがあり、鉄鋼・非鉄金属・セラミックス・プラスチック等々、様々な種類の基材に加工が施せます。必要範囲だけ部分加工ができ、加工物の寸法にもほとんど制約がないことも特長です。
- 現在では、橋梁やジェットエンジンの部品、日常生活に近いところでは、炊飯釜にまで溶射が用いられており、様々なところで活用されています。
引用元:一般社団法人 日本溶射学会
(https://www.jtss.or.jp/about_ts-j.htm)
熱源 | 溶射方式 | 特徴 |
燃焼ガス | 高速フレーム溶射 | アセチレンなどを熱源とするため、溶射可能な材料は温度による制約を受ける。 |
電気 | アーク溶射 | アークの熱によってワイヤを溶融し,吹きつける溶射法。溶射速度が大きく,比較的低コスト |
プラズマ溶射 | 高融点の材料粉末が使えるので,金属からセラミックまで広範囲の材料に溶射可能 |
釜石電機で用いているアーク溶射加工の特長
- 当社では主に、モーターやポンプのシャフト・スリーブの摩耗の再生をする際にアーク溶射を用いています。
- 弊社で用いるアーク溶射は、2本の金属ワイヤ間でアーク放電を発生させ、溶融した材料(ワイヤ)を圧縮空気で微粒子化して基材に吹き付ける電気式溶射の一種です。
- 溶射材料が高温で十分に溶融されているため、基材への密着性に優れていると言われています。溶射後に、再度旋盤上で基準値の加工精度まで旋削して仕上げます。
- また、当社では、長年培ってきた溶射技術を活用した光触媒(酸化チタン)の溶射成膜技術も有していて、同技術は岩手県工業技術センター様との共同開発の結果、特許も保有しています。
- モーター整備に関わる溶射に限らず、産業用機器の受託溶射施工を承りますので、お気軽にご相談ください。
当社でのアーク溶射の様子(シャフトへの溶射例)
溶射加工のメリット
- 部品交換が不要になることはもちろんのこと、摩耗部の修理に溶接を用いる場合に比べて、納期を短縮できることも特徴です。例えば、ベアリング嵌め合い部分の摩耗に対して溶接加工で対応する場合は、溶接の乗りを良くするために加工面を洗浄し、母材を乾燥室で温めてから作業をするために、1カ所に丸一日の作業時間が必要と言われます。
- これに対して、溶射加工では、摩耗部を確認した後、すぐに作業が開始できるため、最短、数時間での修理が可能となり、お客様への納期を早めることが可能です。
溶射についてご相談があれば、お気軽に、問い合わせフォームよりご照会ください。
シャフト・スリーブ溶射の一連の流れ
- 釜石電機では、シャフト・スリーブに、基準値より-0.05mm以上の摩耗・減肉が確認できる場合は溶射加工を施します(もちろん、お客様に特段の指定があればそれに従います)。また、溶射後の仕上は図面記載のJIS規格又はお客様指定に従って仕上げます。
- 上記の写真は溶射加工における一連の流れを一本のシャフトで模擬的に施工したものですが、左端の摩耗損傷状態から右端の元通りになる状態になることが見て取れます。当社ではトップコートにSUS系の材料を使うことが多いので、元通りというよりも、より強化された状態にいたします。
釜石電機の溶射事例のご紹介
- モーターシャフトの溶射風景については、こちらの動画からご覧ください。
- ここでは、摩耗・損傷したポンプのスリーブの溶射についてご紹介します。ポンプでは、流体の漏れを制御する部品としてグランドパッキンやメカニカルシールが主に用いられますが、特にグランドパッキン仕様の場合、接触するポンプスリーブの摩耗・損傷が大きい場合が多く、その場合、整備の度にスリーブの整備が必要になります。
- 下の写真は再生可能エネルギー発電所(バイオマス、地熱等)で使用するポンプのスリーブです。グランドパッキンとの接触摩耗によって、スリーブの表面が見るからにかなり凹凸になっていることが分かります。このような状態でも溶射を用いて再生できます。もし、「シャフトは溶射していたけれど、ポンプのスリーブは整備の度に交換していた」ということがあれば、次は、溶射での再生をおススメします。
ワンポイントメッセージ:釜石電機と溶射との出会い
- 釜石でまだ鉄鉱石が採れていた頃、釜石鉱山で使われるトロッコ電車のモーターの整備をよく手掛けていました。このトロッコ電車のモーターは過酷な環境で用いられるため、すぐシャフトの損傷を起こしてしまい、当時はモーター整備の度に、シャフトの交換をしていました。
- そうしていたところ、「毎回、シャフトを交換するのは非効率」という声を頂き、それをきっかけに「交換」せずに「再生」する溶射を手掛けるようになりました。この話が1980年頃で、その頃から溶射に取り組んでおり、岩手県内でもいち早く溶射に取り組んできた会社です。
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